映画見てるときの思考たれ流す

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映画『スティルウォーター』のストーリー構造(監督:トーマス・マッカーシー)

  • 『スティルウォーター』のストーリー構造を分析したいと思います。ストーリー全体の分析ではなく、私が気になった部分のみ分析しています。
  • また、読者の皆さんが映画を見ている前提で書いていますので、ネタバレがいやな方はお気をつけください。

『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』と非常に近いプロット

  • ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結とかなり軌道が近い。特に2/3時点くらいまではほぼ同じ。以下、スーサイドとスティルウォーターについて比較してみる。
  • 主人公は父親として娘と良い関係が築けていない。
    • スーサイド:面会室で「Fワード」で罵り合う場面が象徴的。
    • スティルウォーター:娘の育ての親はおばあちゃんであり、育児にはほとんど関わっていなかった。娘の手紙にも「父はあのとおりで信用できません」という言葉が書かれている。
  • 娘を救うことを決意する。
    • スーサイド:政府高官のウォラーに娘を人質に取られ、娘を救うため極秘ミッションにリーダーとして参加。
    • スティルウォーター:ルパルク弁護士が協力してくれないため、娘の無実を証明するため独自で調査に乗り出す。
  • その過程で少女と出会う。彼女は主人公に娘の存在を思い起こさせる。
    • スーサイド:チームメンバーとしてラットキャッチャー2と出会う。
    • スティルウォーター:ホテルの隣の部屋に宿泊していた少女マヤと出会う。
  • 両作品とも少女には父親がいない。
    • スーサイド:ラットキャッチャーの父は亡くなっている
    • スティルウォーター:少女の両親は離婚していて、母親と暮らしています。最近は会っていないとも語られる。
  • 次第に少女と良い関係を築いていく。まるで父親のような関係性。
    • スーサイド:車内でそれぞれの過去を明かし「生きて帰す」ことをお互いに誓い合う
    • スティルウォーター:少女の面倒を見るようになったり、一緒に家を修理したりします。
  • そして娘を救うための最後の戦いに向かっていくのだが、ここから両作品に違いが現れる。
    • スーサイド:ラットキャッチャー2やチームの仲間と協力してヒトデ型モンスターとの戦いに挑む。この戦いで少女の存在は主人公の目標(モンスターを倒すこと、娘を開放すること)を達成するための力になっている。ラットキャッチャー2は劣勢だった戦況をひっくり返す。ラストシーン、帰還する飛行機の中で主人公はネズミを恐る恐る撫でる。これによりねずみを克服しました。これが何を意味するか、ネズミは暗殺者として育てられた少年時代の象徴であり、この暗殺者としての自己認識により主人公は他人と良い関係を築くことができないと、自身を縛り付けていました。映画には直接描写されていませんが、この呪縛から解かれたということは、主人公はこの後娘と親子の関係性を築くことができるはずだ、というポジティブな期待を抱かせ、物語は終わります。
    • スティルウォーター:少女マヤやその母親ヴィルジニーの支えのおかげで主人公は異国かつ危険な街で捜査を進めていくことができていた。しかし、主人公は犯人を逃してしまい、娘に嘘を付いていたこともバレてしまう。そして物語は一気に4ヶ月飛びます。ここからヴィルジニーとマヤのいる環境は主人公の目標達成を助けると言うより、目標達成から遠ざけるような甘い誘惑としても機能しはじめる。マヤは主人公にとても懐き、ヴィルジニーともどんどん距離が縮まっていく。少女たちの存在をポジティブな力に変えるのではなく、主人公は依存してしまう。依存してしまった主人公には2つの選択のどちらかを選ばなくはならない。このまま当初の目標を諦めて目の前の幸せを掴むか、もう一度当初の目標を思い出し実現するために、目の前の幸せを放棄するか。本作では後者を選んだが、娘の冤罪を晴らすことができてよかったとスッキリとしたハッピーエンドで終わるのではなく、実は娘が依頼したことが発端となっていたという非常にグレーな終わり方をします。
  • (補足)この疑似家族観(親と娘の擬似的関係)はウィンドリバー_映画にも共通する

4ヶ月のタイムジャンプにより、主人公は娘を救えたのか、諦めたのかというサスペンスが発生する

  • (プロット)主人公は刑務所にいる娘の冤罪を晴らそうとしている。娘は海外の刑務所にいるため、主人公も言葉の通じない海外に行き、運良く通訳をしてくれる女性を見つけ、彼女と協力し冤罪を晴らそうとしている。しかし主人公は真犯人をあと一歩で逃してしまい、娘からの信頼を完全になくしてしまう。そして、この事件の後、一気に4ヶ月のタイムジャンプが入る(58分)。
  • (ポイント)テロップで時間が経過したことが分かると、観客は「え、どうなったんだ?」とサスペンスが生じる。無事捕まえることができたのか、まだ捕まえようとしているのか、諦めてしまったのか。そして、このタイムジャンプ明けに観客が最初に目撃するのは「主人公が通訳をしてくれている家族と仲良く過ごす姿」である。観客はここで落胆する。もしや主人公は娘を救うことを諦めてしまったのではないか、と。違うだろお前の家族は彼らじゃない。逃げるな頑張れ、と主人公に落胆する。