映画見てるときの思考たれ流す

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HBOドラマ『The Last of Us』第3話のストーリー構造(監督:ピーター・ホアー)

  • The Last of Us』第3話のストーリー構造を分析したいと思います。ストーリー全体の分析ではなく、私が気になった部分のみ分析しています。
  • また、読者の皆さんが映画を見ている前提で書いていますので、ネタバレがいやな方はお気をつけください。


(プロット)2003年 隔離地域の兵士から逃れて、周りの住民が連行されても一人そこに住み続ける男ビル。街を独占して4年住み続ける。あらゆる資材を一人で使える。ある男が感染者用のワナにかかる。彼の名はフランク。ここ最近何も食べていないから飯をくれと頼む。しぶしぶ家に招きいれ、ビルはフランクに料理とワインを振る舞う。幸せそうなフランク。

  • ここでビルのセリフがリアルで最高に良かった。「まだあるぞ」とお代わりを勧めてしまうのだ。久しぶりの人間との会話。顔はずっと険しく眉間にシワが寄り、腰元に銃を携帯して警戒しているのとは、全く裏腹なセリフである。
  • その後フランクが「じゃあそろそろ行くよ」と言うと、ビルは無言でうなずく。まるで長年の友人との別れを噛みしめているかのように。


(プロット)数年後、フランクはテスと繋がったことにより、内地と物資交換をするようになり、イチゴのタネを入手し、ビルにサプライズでプレゼントする。イチゴをかじって泣き出すビル。

  • この世界で生きるということがどういうことかリアルに描写されている。彼らがどのように生きているか、どのようなことが嬉しいのか、というのが伝わってくる。


(プロット)数年後、略奪者が来る。 腹を撃たれたビルは、フランクに遺言を残す。画面が暗くなり、フランクが「ビル」と呼ぶ声だけが響く。画面を明るくなりそこには10年後のフランクとビルの姿がある。

  • 観客はフランクのビルを呼ぶ声を聞いて、ビルが死んでしまったと悲しむ。しかし、数秒後画面は明るくなり、そこには二人の姿がある。「暗い画面に死んでいく人物の名前を叫ぶ」というよくある描写を逆手にとって、観客の予測を裏切っている。


(プロット)最後の日を過ごす。夕食のシーン。

  • 夕食のワインを飲んだフランクは、ビルと初めて出会った日と同じリアクションをする。そのあまりの美味しさに天を仰ぐのだ。 あの日と違うのは2人の距離だけである。あのとき長いテーブルの端と端に座っていた2人も、今では隣同士で寄り添っている。
  • 世界がパンデミックに陥っているとか関係ないのでは?と感じた。彼らを見ているとそんなこと忘れてしまった。世界の情勢なんてものは関係なく、全力でその世界を楽しみ、全力で相手のことを愛すということはどんな世界であってもできるのだ。
  • ビルが当初得体のしれない男を警戒していたように、観客(私)自身も「この気の良さそうな男(フランク)と仲良くなるが、どちらかが裏切って醜い殺し合いになるのだろう」と思っていた。そういう世界観の物語なのだと思い込んでいた。しかし、ビルが愛を知ったように、観客(私)もこの世界に愛があることを知った。
  • 最後の日に流れるMax Richterの『On The Nature Of Daylight』が最高である。